今回の牧野さんとの上映は、ちょうど一年前の爆音映画祭で牧野さんの『2012 act.3』と[+]screeningのプログラムを観てから準備を始めた企画です。
ほんとは去年の秋口に出来たらよかったのですが、もろもろの事情で延期、およそ一年がかりでなんとかここまでの形にこぎつけました。
“EXP / 牧野貴”と題して、岡山・大阪・京都、計4日間のプロジェクションツアーとなります。
延期というのも悪いことばかりでなく、期間が延びた間の出会いが岡山上映を呼びこみ、京都JAPONICAの上映も先日のvol.2がなければ企画することはなかったでしょう。
そんなグルーヴをふんだんに盛り込んだこのツアー、詳細を説明します。
http://doom-insight.net/exp/2013/
まず7月6日は岡山のカフェmoyauでの上映。岡山での上映は初となるのではないでしょうか。
ここでは牧野さんの作品をかなり幅広く見ることができます。初期作品から最新作『2012』まで上映です。その場で音をつけるライヴ上映もプルフリッヒ・エフェクトによる3D上映もあります。
上映は夜ですが、お昼からは爆音映画祭の依頼で2009年に制作された『The World』を展示上映。
上映後は牧野さんによるDJもあるとのことです。
http://doom-insight.net/exp/2013/okayama.html
7日は大阪にて、こちらも岡山と同じく牧野さんの代表作を中心に幅広く上映します。
処女作から、ジム・オルークが音楽をつけた『still in cosmos』や『Generator』、そして牧野さんが最近力を入れているフィルムとデジタルによって二台映写をする『Space Noise』のライヴ上映もあります。
僕らにとってもかなり久しぶりとなる完全独自企画の上映会。二年前の牧野貴×ケネス・アンガー爆音上映以来になりますか。早いものです。
この日は七夕なので、この日にだけ宿るであろうスピリチュアルでコズミックな力を召還出来る上映にしたいと思っています。
http://doom-insight.net/exp/2013/osaka.html
それから8日は京都JAPONICAにて僕たち主催のDJパーティーRuffiN’ vol.3です。
カフェ、バー、つまり社交場にいかにして「映画的なもの」を接続するか。これは僕たちにとってのここ最近の大きなテーマです。
シネクラブFABRIC!にしろ、このRuffiN’にしても、そうした意識から生まれた企画。
そして今回、ついに映画そのものを社交場に持ち込むことが出来ることになりそうです。
クラブでもないDJパーティーなので、みんなわらわらとおしゃべりしたり食事をしたりとそれぞれに楽しんでいる場になっています。そんなところに映画作品そのものを持ってくることなんて考えもしなかったのですが(いちおう上映環境とかも考えてこりゃ難しいなとか考えますので)、前回、『Playback』とパーティーをやったとき、三宅さんがDJを始める前に予告編を流したら、そこにいた人たちが自然とそれぞれ映像が見えるところに集まったんです。それを見たときに、これなら映画を上映出来ると確信しました。
ただ、映画を観るには機材的にいろいろあるので、スクリーンをレンタルし、プロジェクターも牧野さんのものを持ち込んでの上映です。
普段スクリーンと向かい合って見る映画とはあまりに違う形で映画が現れて驚くのではないでしょうか。
まさしく手に取ることが出来るような、映画に触れることが出来るような上映になると思います。
こちらは夜20時からのイベントです。僕らもDJやります。
http://doom-insight.net/exp/2013/japonica.html
あと、FM DOOM!更新してるので聴いてくださいね。じめっとした空気に気持ちいい音楽がつまってます。
http://doom-insight.net/sound/mix/fmdoom.php
それから最後、9日は同志社大学寒梅館にて牧野さん主宰の[+]screeningによる上映です。
今回上映するのはヨハン・ルーフとベン・ラッセル、ビル・モリソン、葉山嶺、それから牧野貴らによる5作品。
去年の爆音映画祭でのプログラムが牧野さんとまた上映をやろうと思ったきっかけだと先に書きましたが、今回も上映されるベン・ラッセルの『River Rites』がとにかく素晴らしかったのを覚えています。
実験映画と言われる作品の素晴らしさって、見たままの簡潔さ、言葉にすると数行で終わるようなシンプルなものなのに、これまで自分が映画だと思っていた枠組みがたちまち崩されて行くところだと思います。いや、崩されるというか、枠が広がるというか。
今回もそういった体験が用意されているはずです。
http://doom-insight.net/exp/2013/doshisha.html
牧野さんは自身の映画について「観客に見られることによって完成する」と言っていますが、それは観客が作り手の側に入り込むことでもあります。そこには作り手と受け手の境界はない。それはDJで言うなれば一方的に音楽をかけるのではなく、フロアの様子を見て選曲するようなものと言えるかもしれません。そこではオーディエンスも知らず知らずのうちにDJと一緒になって選曲している。そしてDJもまたオーディエンスに耳を傾ける。お互いが空間と音楽に奉仕する素晴らしい瞬間が生まれる。
そのようにして映画と共犯関係を結ぶ体験の場、それが今回の「EXP / 牧野貴」です。
牧野さんの映画を観ると、映画は芸術の中のある枠組みを持ったコンセプチュアルアートではないということを確信させてくれます。
観客の中にあるフレームを取払う映画を実験映画というのなら、すべての素晴らしい映画は実験映画と言えるでしょう。
そうして常に実験し、体験し、拡張し、爆発し、表現し、外へ、外へと広がること。
後戻りの出来ない人生へと後押しする力が牧野作品には眠っています。
ご期待あれ。
牧野貴 HP
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同志社大学寒梅館イベントページ