爆音映画祭 6/2


三日目にして、映画祭に通って深夜に日記を書くという作業に疲れてしまった。
そんなことを言う人間のすぐ近くで、12時間ひたすらレコードを聴き続けるイベントをやった人がいたりして、この程度で疲れたなんてぬかすんじゃないと叱咤された気持ちでもある。


『逃亡者』は90年の作品でありながら、古い映画のゴージャスな品格を備えた堂々たる映画。
今回のチミノ作品の中では目立たない作品かもしれないが、爆音にするだけの甲斐のある作品に思える。
『サンダーボルト』の葉巻を割る音が、死者によって作られた音であり、またそれを死んでいった者の代わりに聴いたのだとしたら、この映画では誰も聴こえていないはずの死に逝く者の口笛をカメラだけが映し出す。
あのかすかな口笛の音は容易く川の流れに消されていたが、その男に向かって発せられる拡声器の声は、山をいくつも越えるほどの勢いで一人の人間を射止めようとする。
あの他者を抑圧する声は、いくつもの山の間を反響し、いずれ小さく消えるのだろうが、その小さくなった空気の振動が木霊となって山から谷へと浸透し、川を下り、そうして広がった言の葉が他者を支配下においているのではないか。
この映画にはいくつかの支配が見えていたが、そこに簡単に現れることのない、外側にある圧倒的な支配の片鱗が、あの壮大な谷のエコーの中に見えたように思う。
『悪魔のいけにえ2』は人生初のトビー・フーパーのフィルム鑑賞で冒頭のクレジットから涙。
橋の上をトラックが逆走するシーンから、気の振れ方が尋常じゃないのは登場人物だけでなく、作り手が何より狂っているだろうと確信する。いや、むしろ確信したいどころか、ふざけてるのか本気なのかよくわからない黒子になったババのチェーンソー捌きは、貴様は観客として狂うつもりがあるのかと試されるようでさえあった。もちろん、爆音上映まで用意されながら狂わないはずがない。ときにデニス・ホッパーとなって梁を切り倒し、ときにレザーフェイスのようにチェーンソーを振り上げ腰を振り、兄貴となってハンガーをあぶり、じいさまになってハンマーを振る。最高の時間だった。