こんばんは。ながさきです。
昨年見た映画からベストテンを作ってみました。
- 『やくたたず』三宅唱 京都シネマにてデジタル上映
映画はいつだって牛のお乳を搾り取って来た。「モ〜」と鳴いてる牛さんをちょっと横から失礼します、なんてカメラを向けてはお乳をぺろり、そこに内在する真っ白いミルクを搾り取る。。。
しかし三宅唱はそんなすけべ野郎では断じてない!
果てしない大空と白い大地などどこにもなく、果てもある白く雪で覆い尽くされた何もない風景をまったく寒そうにしない学ラン姿の高校生たちがやくにたつのも立たないのも自由な存在として走り回り、この時代の自由の不可能性を映し出していた。
『Playback』についてはこちら
- 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 前編/後編』新房昭之/宮本幸裕 梅田ブルク7にてデジタル上映
『やくたたず』がやくにたたない自由を描いたとするなら、こちらはやくにたつ自由によってこの時代の困難を映す。搾取される自由にも大きな未来があるかのように希望を語りながら、やっぱり大搾取される。
90年代のバブルの残骸から不能な00年代によって生まれたものを「魔女」とひとくくりに片付けるのには、『北のカナリアたち』の小学生のたちが過ごした不毛で不幸な20年ほどの時間や、『Playback』の高校生から40歳までの20年よりも残酷で軽薄な時間処理を感じた。空白の20年。
『まど☆マギ』についてはこちらと1/14発売のTRASH-UP!!#14に原稿書いていますのでそちらをどうぞ。
- 『5 windows』瀬田なつき 爆音映画祭にてデジタル上映
未来から来たイメージが今の時代に形を合わせてくれたかのような作品。スクリーンではそんな窮屈さと開放感を併せ持つ。
だから関西でも屋外上映したいんです。おそらく五月ごろ。屋外上映を4カ所と劇場一カ所なので、すごく大変な作業になります。何が出来るかにかかわらず何かやってみたいという好奇心のある方、一緒にプロジェクト進めましょう。
- 『悪の教典』三池崇史 TOHOシネマズ西宮にてデジタル上映
邦画のメジャーで久しぶりにすごい作品観たと思った。めっちゃ頭のいい奴が自らの目標のためだけに知恵を働かせて、しかもそれが世の中のためにならないどころか身近な人はめっちゃ迷惑被るというシュミレーション。でもこれ実際あいつとかあいつとかあいつらなんてこんな感じなんじゃないすかね?ぐへへ。
今年はこれと『カルロス』と『アウトレイジ ビヨンド』は政治三部作として後世に残したい。悪は強い。悪への想像力を働かせよう!
- 『J・エドガー』クリント・イーストウッド OSシネマズミント神戸にてフィルム上映
我々DOOM!主催のFABRIC!の中で、この映画の持っている力が掘り起こされていった。その過程も刺激的であったが、そこでの批評に感動した。
このベストは自由についての映画を選んだと言える気がするが、今年の映画で唯一これだけが自由そのものだったのではないだろうか。
『J・エドガー』の回のFABRIC!について
- 『テトロ 過去を殺した男』フランシス・フォード・コッポラ 爆音映画祭にてデジタル上映
映画の中にあらゆる感情を湛えていた。素晴らしく美しい映画だった。
- 『汽車はふたたび故郷へ』オタール・イオセリアーニ 京都シネマにてフィルム上映
自由を勝ち取るがための不自由。不自由から逃れるための自由。どちらも同じこととして同時に映し出されていた。
『汽車はふたたび故郷へ』について
- 『きっとすべて大丈夫 三部作』ドン・ハーツフェルト 爆音映画祭にてデジタル上映
簡単な線で書かれたビリーという個人を巡る壮大な冒険というコンセプトが素晴らしい。ミクロとマクロを同時に語り続け、そこにはユーモアとナンセンスが最高の塩梅でちりばめられている。世界への愛に溢れた傑作。
- 『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル TOHOシネマズ西宮いてデジタル上映
こちらもFABRIC!での経験がなければベストには挙げなかったかもしれない(つまり今年のベストワンはFABRIC!そのものになるのかも?)。
徹底的に表象の人がめっちゃ美人を撮ったら次第に男にしか見えなくなってチンコも萎えずにはおれないという始末に負えない映画だった。見るという行為の複雑さに悩んだ。
- 『幸せへのキセキ』キャメロン・クロウ パルシネマしんこうえんにてフィルム上映
エル・ファニングがめたんこかわえかった。それはいいとして(いや、ほんとやばいかわいいんだけども)目の前の困難を前にまた新たな困難を抱え込み、その困難に眠る解決の兆しをそのまま最初の困難の解決にまで当てはめようとする大胆さ。
俺も「動物園買っちゃった!」って言いたいっす!