延期したことと遅過ぎるおっさんたち


こんばんは。少しずつ秋が近づいてきて、夜は肌寒くなってきました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
DOOM!は新しいロゴを手に入れました。
new_doom_logo.jpg
もうすぐ五年目に突入しますし、心機一転、今後はこのロゴでいこうと思います。
って、しばらくはサイトもこのままですし、かつてのロゴも残りますが、カッコいいしうれしいので紹介です。
デザインは爆音ゴダールでお世話になったり、boidまわりのフライヤーなどを手がけられている大塚さんです。
ありがとうございます!!


少しお知らせを。
11月に牧野貴さんが主宰している[+]の上映を僕らと一緒にやれないかと準備を進めていたのですが、延期することになりました。楽しみにされていた方、申し訳ありません。
ただ、これは僕らにとっても[+]にとっても後ろ向きな延期ではないということは記しておきます。
準備をする上で企画の規模が大きくなり、その企画に見合った宣伝や集客が今のままでは難しいと思い延期することにしたのです。牧野さんから本当に楽しみなプログラムが上がってきて、でもそこから準備するにはあまりに時間が短かった。これまで僕らがやってきたような上映の準備ということであれば十分な期間があったのだけど、この企画を届けるためにはもっと長い時間が必要だと思いました。
ひとまず半年ほどは延期しようと思います。
そのための準備はすでに始まっています。期待していてください。

それからマンスリーDOOM!更新しています。今回はちゃんとマンスリーのペースで更新。
今回はキアロスタミの新作『ライク・サムワン・イン・ラブ』です。今回はいつもとテイスト変えてます。
ヤクザに脅されながら映画を観る
キアロスタミの映画、今回のも評判良いみたいで確かに画面の連鎖はほんとピカイチのお家芸が炸裂してて素晴らしいのですけど、どうにも違和感がある。
この映画を窓によって仕切られるガラスのような見えない境界の映画と観たときに、確かにこの時代を生きる僕らはあらゆる物や人に対してこの見えない境界を用意して一つ一つの物に対して価値を値付けしていく。この車はワーゲンのビートルで排気量は云々だから燃費悪いけどなかなか走るよ、なんてことを見定めて「これはこういうものです」ということを規定していく。
ファーストカットが映されたとき、そこから聴こえてくる声の主を画面いっぱいに視線を走らせて探す。そのようにして事物の正体を掴もうとしてしまう。そんなことはどうだっていいことなのかもしれないのに、そうせずにはおれない、気が済まない何かがあって、加瀬亮演じる男はそこに苛立つ。
この映画は間違いなくその見えない境界に貼られたレッテルを操作して観客の想像力を膨らませることに関心があるし、キアロスタミは前作でも真/贋についてそういう遊びをやっていた。そうやって画面に眼を走らせて頭を回転させることはとても面白いことではあるのだけど、ただの思考ゲームでしかないじゃないかという思いもあるし、レッテルなんて実はどうだっていいことでもある。
キアロスタミはそこを自覚しているのかしていないのか、不意にその境界に穴を穿つようなことをするのだけれど、そもそもその思考ゲームを選ぶということがどうでもいいことへの参加なのだから、そこに穴が空くことも同じようにどうでもいいことなんじゃないかという思いもあるし、いくら眼や頭を走らせることが面白いからといってそのゲームにいつまでも乗り続けるのはどうなんだろう。
キアロスタミ自身も、どこまで悪意でどこまでが素でこういう映画を撮っているのか。ほんとうに食えない監督だと思う。

ところで『莫逆家族』を観たのだけど、1980年ごろに暴走族だった連中が20年経ってもそこでの出来事を引きずっていて、それを20年越しに解消するというのがこの映画の軸にあるのだけど、たとえこの映画はフィクションとはいえ、その20年を生まれたときから生かされてきて来た自分のような人間からすると「何を今更、ふざけるな!!!!!!!!!」と言いたい。この映画はなぜか林遣都のモノローグが導入されているのだけど、主役の父親がちょっと前を向き始めたからといって、お前が生きて来たその時間ずっと問題解決を先延ばしにしてきた大人たちをそんな簡単に許していいのかと、甘過ぎやしないかときいてみたい。
いい歳こいたおっさんがなんの思いつきかきっかけがあったからか、そうやって前を向こうとすることを非難するのも年少の者として大人げないとは思うが、しかし、それでも、「立ち上がるのが遅過ぎる!!!!!!」と声を大にして言いたい。
あんたらが立ち上がるべきときはとっくの昔にあったんじゃないか。それをしてこなかったから今こんなことになってるのに、「何を今更ちょっと立ち上がったくらいでそのこと誇示しとんじゃ!!!!!!」と言いたい。
と、言いたかったので言いました。