『アナと雪の女王』

review

ミュージカル映画が好きだけど面白いミュージカル映画は少ない。
そんな中で観た『ウォルト・ディズニーの約束』はミュージカル映画ではないけれど、音楽が人の感情と物語を増幅させ運んでいく様子が映しとられていてとてもよかった。

この『アナと雪の女王』はわざわざ歌を歌う必要があるような瞬間(つまり音楽が人の感情を増幅するような瞬間)はあまりないが、これまでお城の一室に引きこもって自分の能力を隠し生きて来た女王が、いよいよ隠しきれなくなったことに開き直って、これでいいのだと、ありのままでいいのだと独りで生きていくことを心から幸せそうに歌うシーンは音楽で女王の感情が増幅していたように思った。しかし独りでいることを幸せそうに歌っておきながら、それ以降の女王がまったく幸せでなさそうなのはなぜなのだろう。山で独りで生きる幸せというものも観てみたかった。

映画の前半はこの引きこもった女王を引っ張りだすことが物語の軸として展開するが、後半からは主人公のアナが真実の愛をみつける物語へとシフトする。
ここで映画は真実の愛といえば王子様のキスだということで一日で結婚を決めた相手のもとへ急ぐが、それでめでたしとなるかというとそんなことはない。その王子に愛は微塵もなく、じゃあひょっとして氷屋の男かとおもいきや、愛はそう簡単なものでもない。

とはいえ主人公は無事真実の愛を手に入れることで映画はめでたく終わりを迎えるのだが、このとき彼女が手にした真実の愛というものがいったいどれほどのものなのか疑問は残る。

あそこで彼女が手に入れた愛というものは、誰かに与えられるものなのか、あるいは彼女の内側から沸き上がるものとしてあったのか。あの献身にあるように、彼女の内側から生まれた愛なのだとすれば、独りで姉を追いかけることも同じ愛によるものだろう。体を張って姉を守ることと山に登ることとではかかるコストは計り知れないが、しかし、愛というものが、登山をして引きづり出す愛と献身とを天秤にかけたときにどちらか一方が重かったりするようなものなのかは疑問である。
あるいは姉の中に妹への愛が生まれたことによって真実の愛を手に入れたとするなら、これほど軽薄な愛もないだろう。何かがなくなったからという理由で重くなるようなものほど、愛とほど遠いものはないではないか。

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