「爆音映画祭 in 関西」レポート

review

GWに爆音映画祭 in 関西に行ってきました。


ぼくがいま住んでるのは、爆音のお膝元というか、発祥の地、吉祥寺なんだけど、なにげに関西での爆音上映は、ゴダール『映画史』を皮切に、すべて参加している。まあさすがに東京在住で関西爆音をコンプリートした人は、boidの樋口さん以外に、そういないのではないか、と思ってるのだけど。爆音歴かれこれ8年の、そんな”爆音ばか”が見た爆音映画祭 in 関西について、つらつらと書いてみました。

とはいえ、すでに 爆音GO WEST『爆音映画祭in関西』のためのささやかなレポートに、ばっちり書いてあるので、ここでは上映作品ごとにバウスVer.と比較を交えつつ、ぼくなりの感想を、ごく簡単に。

◯クエンティン・タランティーノ『デス・プルーフ in グラインドハウス』
爆音の常連。毎度、毎度、オープニングのJack Nitzsche”The Last Race”でいっきにテンションがあがる。いきなりのフルスロットル。わかっちゃいるけど止められない、というヤツ。会場の神戸アートビレッジセンター(KAVC)の音のバランスが良くて、今回はいつも以上にタランティーノの選曲センスを堪能できた。たとえるなら「アナログばか一代」で『デス・プルーフ』のOSTをかけてるような感じ。なんて、ウハウハしてると、いきなりの暴走音でむりやりストーリーに引き戻されることになるんだけど。ま、そういうメリハリを含めとにかく絶妙で気持よかった。

◯レオス・カラックス『ポーラX』
なにを隠そう第1回爆音映画祭でぼくがリクエストしたのが、これ。票が足りず選に漏れたが、第3回爆音映画祭で上映された。という、思い入れのある1本。見た方はお分かりでしょうが、まさに爆音でこそ見られるべき作品。KAVCの爆音は、骨太なバウスサウンドに対して、すごく端正。いうなれば「箍の外れてしまった世界」を、バウスは”凶暴”に再構築していき、KAVCは(カラックスと)”共謀”して再構築していくみたいな。そんなイメージだろうか。そうやってバウスとKAVCとを見/聴き比べてみれば、そのエモーショナルで、ストラテジックな、カラックスの手数の多さに圧倒される。そこには”以後の”世界の音が響いていた。あと戻りのできない音が。

◯『シガー・ロス INNI』
爆音には覚醒系と、催眠系がある、と(勝手に)思ってて、昨年11月のバウスでも、KAVCでも、途中 あまりの心地よさにすーっと意識が遠のいてしまった。バスドラがイスを揺らし、ヨンシーのファルセット・ヴォイスが高みへと上ってゆく。そんなふうに爆音に包まれて、ぼんやり寝たり、起きたりしていると、映像の不思議な質感と相まって、なんだか体ごとどこかに持ってかれるようで、たぶんアホみたいにポーッとした顔で見てたと思う。そして(これまたバウス同様に)怒濤のクライマックスで目が覚めた。というわけで、KAVCでは、バウスとほぼ同じ箇所で寝て、同じ箇所で起きたんだけど、そのあいだに飛んでいってた意識は、あるいは昨年11月のバウスの天井あたりを漂っていたのかもしれない。

◯『メランコリックな宇宙 ドン・ハーツフェルト作品集』
リアル(=立体的)で、ヘヴィ(=立体的)で、ゴージャス(=立体的)な3D爆音が、壮大な宇宙と、微細な日常を増幅させていく。「人生の意味」を見ていて、”生命とは動的平衡にある流れである”(福岡伸一)というのを思い出した。つまり、ドン・ハーツフェルトの”生命たち”は、そろってアンバランスなんだけど、であるが故に、どうにか危うい平衡を保っている、ということ。爆音がその危うさを強かに共鳴させていた。たとえば「リジェクテッド」で”却下(リジェクテッド)”される前の作品群はいかにも人工的な音世界に囚われていたが、却下され、リアルな音の嵐のなかに抛り出されると、またたくまに生命(いのち)を取り戻していたではないか。こんどバウスで「きっとすべて大丈夫」のビルくんに再会できるのが楽しみだ。

◯ガス・ヴァン・サント『エレファント』
けっして派手な音ではない。いわゆる微爆音系(?)の作品なのだけど、ガス・ヴァン・サントの爆音と言えばむかしバウスでやった『GERRY ジェリー』は凄かった。そこには居ないはずの第三者の足音がたしかに聞こえてきて、ほんとうに驚いた。で、『エレファント』はというと、爆音がその音響の洗練さと奇妙さを増幅させたおかげで、瑞々しい浮遊感と同時に生々しい存在感をまとっていて、すばらしかった。世界との齟齬に、コラージュされたサウンドと環境音とが反響する。鳥のさえずりが銃撃のあわいに入り込んでくる。おそろしく心がざわついたのは、この日のスーパームーン現象(「月光」!)のせいばかりでない。あの日の、高校生ひとりひとりの『ラストデイズ』、その空気を震えを感じたからだ。

◯スティーヴン・スピルバーグ『未知との遭遇』
スピルバーグ×爆音は、これまで『プライべート・ライアン』に、『宇宙戦争』と、いずれも圧巻だったが、この『未知との遭遇』は、スピルバーグのかわいらしさが炸裂した、じつに幸福な音に満ちあふれていた。ひとりでに動きだしたおもちゃがいっせいに煌めく。そんな子供のようなイマジネーション。空からやって来た(皆いっせいに上空を指差すシーンに笑った)という5音のフレーズを使って、ピカピカなマザーシップと交信をはかるトリュフォーもいかにも楽しげで。だんだんと早弾きになるところなんて最高だった。いてもたってもいられなくなって、つい宇宙人も出て来てしまったみたいな。きっとここでの交信が発端となって『孤独な惑星』(今年の爆音映画祭にて上映)を豊かに彩る音が生まれたのだ、と。そんな気がした。

残念ながら『キック・アス』と『AKIRA』は見てないが、見た人のニコニコした顔からして、かなり盛り上がったんじゃないかと思う。見た人の顔をほころばせてしまうような爆音はやっぱり良いですね。そして会場を神戸から京都に移しての後半戦。全体的に筋の通った爆音をしっかり響かせていたKAVCに対して、同志社はとにかくゴージャス!ホールの鳴りの良さは随一!

◯フリッツ・ラング『メトロポリス』×Hair Stylistics
昨年の爆音映画祭での『ナヌーク』×Hair Stylisticsの、闊達で、繊細で、ダイナミックで、ユーモラスな、見事な伴奏に引き続き、『メトロポリス』も、おおらかで、やはりユーモアにあふれていて、すごくよかった。ストーリーに寄り添い丁寧に奏でられるピアノ。そこへ中原昌也が絶妙な合いの手を入れ、豊かに肉づけしていく。その奥行のあるサウンドが、都市の下に押し込められたサイレント・マジョリティに声を(力を!)与えていた。Power to the People
! ついに声を上げた地下のマジョリティと、地上のマジョリティがぶつかり合うスペクタクル。その後の瓦解した世界にざわめく小さな声。すばらしい伴奏だった。

◯オリヴィエ・アサイヤス『デーモンラヴァー』
いやー、ほんと凄まじかった。この爆音映画祭 in 関西で、もっとも凶暴だった1本。したたか打ちのめされた。タイヤの軋み。エンジンの回転。『デス・プルーフ』のノリとは異なる、とんでもない狂気がまとわりついた車の音。フロントグラス、バックミラーといったシネスコに囚われた彼らと、爆音サラウンドに囚われた我ら。彼我をあいまいにして、ともに堕ちていく。下へ……、下へ……。支配/被支配の「資本主義」ゲームは、シネスコの激しい切り返しによって、さらに加速し、ついにはPCモニタの中へ墜ちてしまう。しかし その先にしかBoarding Gate(『レディアサシン』)は開いていないのだ。そんなふうに思わせる、鮮烈な爆音だった。『デーモンラヴァー』を見た人は、ぜったいにバウスまで来て『レディアサシン』を見るべし。

◯マルコ・ベロッキオ『愛の勝利を/ムッソリーニを愛した女』
「私を見て(Guardi me)」とイーダは言う。総統はいっこうに視線をあわせない。その先にあってしかるべき歴史を見すえ、それが進みゆく足音を聞いている。しかし—-私を見て!—-その踏み出す足の、ほどけた靴ひもを結んでやったのは誰なのか、それを思い出せ!と言わんばかりのゴージャスな爆音だった。査問で折れずに主張するイーダの静かな声に精神病棟のざわめきが寄り添う。無音で降り積もる雪のような そのざわめきは、やがて雨音となって彼女の逃亡を幇助するだろう。そして村人(Popolo d’Italia)の怒りの声をバックにいよいよイーダがこちらを見る、無言で。彼女の視線はムッソリーニ以上の雄弁さで「私を見て」と叫んでいた。

さいごに「アナログばか一代」
今回、音楽が降りてきた瞬間は、Elvis Presleyの”Blue Moon”(イギリス盤SP)とMonchito Mottaの”El Diablo y Yo”だった。前者の、クリアな幽かさとでも言うべき、この世ならざる声。後者の、つややかな色気。音楽をただ聴く(そして「音楽が降りてくる」のを待つ)という行為はこんなに豊かなものなのか、と気づかせてくれる。好イベント。予想以上にたくさん人が入って、おおいに盛り上がった。

と、まあ5/3〜11たっぷり休んだせいで、生活はかなり逼迫したが(笑)、DOOM!のみんなに会ってワイワイと、とても豊かなGWを過ごせた。ほんと楽しかった。ゆるやかに人を巻き込んでいくDOOM!の連帯が心地よくて、帰省といいつつ、あんまり実家にいなかったのは、いつものこと。
では、では、こんどは吉祥寺で会いましょう。

安田和高
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