モンテ・ヘルマン監督と「果てなき路」と「脳内ニューヨーク」

review

こんにちは。名古屋に住んでいる森下典子と申します。初めまして。

 

今回は「断絶」のモンテ・ヘルマン監督の21年ぶりの新作「果てなき路」とチャーリー・カウフマン監督・脚本による2009年作「脳内ニューヨーク」についての紹介をさせていただきますが、本題に入る前にまずモンテ・ヘルマン監督(1932年生まれ、今年80歳になります)についてのお話を。

モンテ・ヘルマン初のインタビュー集「モンテ・ヘルマン語る 悪魔を憐れむ詩」(河出書房新書)では、ヘルマン監督がフェイバリットの映画や監督をいろいろ挙げていますが、アルノー・デプレシャンやふたりのアンダーソン(ポール・トーマス・アンダーソン、ウェス・アンダーソン)など現在の映画監督たちの名前も、影響を受けた監督のなかに挙げています。

ちなみに、このインタビュー集の中でポール・ヴァーホーヴェン監督の「ロボコップ」の話が出てきますが、まさか「果てなき路」の監督が「ロボコップ」の撮影に参加していたとは思いもしませんでした。インタビュー集の中では、自分で監督したかったとも話しておられましたが、ヘルマン監督が「ロボコップ」を撮ったらどんなことになったのかなと思いました。

 

次にこの2本の映画の映画音楽の話を。

「果てなき路」では、ベテランのカントリー歌手、トム・ラッセルの音楽が主に使われています。劇中で流れる「Road to Nowhere」はこの映画のためにトム・ラッセルが書き下ろした曲です。

「脳内ニューヨーク」では「パンチドランク・ラブ」などのポール・トーマス・アンダーソン監督の作品でもおなじみのジョン・ブライオンが映画音楽を手掛けています。映画の中で印象的に使われている「Little Person」の作詞はチャーリー・カウフマンで、作曲はジョン・ブライオンです。私はこの曲が聴きたくて「脳内ニューヨーク」のサントラを購入しましたが、この映画やこの曲が好きだという人にお目にかかったことがありません(笑)。「パンチドランク・ラブ」の中で使われたシュリー・デュバルの「He Needs Me」(もともとロバート・アルトマン監督の映画「ポパイ」で使われた曲をリサイクルしたことでも有名ですが)にも匹敵するようなドリーミーな名曲で、ちょっと憂いを帯びた女性ヴォーカルと曲調がこの映画の雰囲気によく合っていると思います。

ようやく本題に入ります。「果てなき路」の主人公の映画監督も、「脳内ニューヨーク」の主人公の劇作家も、映画の中で自分の素直な気持ちをストレートに言葉で表現する場面が極端に少ないのですが、主人公や登場人物たちの心情が、映画の中で流れる曲の歌詞の中に込められている点が共通しているように思います。

私は「脳内ニューヨーク」を映画館で2回、DVDで1回、「果てなき路」を映画館で2回観ました。どちらの映画も1回目に観た時はストーリーを追うのに夢中で、2回目以降に、映画の中で流れる曲の歌詞の意味がより伝わってきたような気がしました。そして映画を観てから時間がたってから、モンテ・ヘルマンやチャーリー・カウフマン自身の思いも、その歌詞の中や、映画の中の何気ない台詞の中に込められているのかもしれないと思いました。

映画内で映画を撮る映画監督とクルーの物語である「果てなき路」と、映画内で劇作家が演劇を演出していくさまを描いた「脳内ニューヨーク」は、その映画内で作られている作品と現実との境界線があいまいになっていくという展開もよく似ています。ただ、その味わいは驚くほど対照的なので(笑)、その辺の違いを楽しみながら、それぞれの映画音楽にも耳を傾けつつ、1回と言わず2回、3回と観ていただくことで、この2本の映画の持つ一筋縄ではいかない豊かな魅力に出会うことができるのではないかと思います!

 

最後に一つだけ。映画についての文章をほとんど書いたことがないような私の文章の掲載をご快諾くださった、長崎さんをはじめDOOM!の皆さんに心から感謝いたします!

 

「果てなき路」の劇場公開情報などはこちらをご覧ください!

 

 

 

 

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「モンテ・ヘルマン監督と「果てなき路」と「脳内ニューヨーク」」 に1件のコメント

  1. 匿名 より:

    森下さんへ
    さきほど、脳内ニューヨーク鑑賞しました。
    すごい映画としか言い様がないです。
    人生で観た映画でも最高傑作かと思います。
    それぐらい感動しています。
    パンチドランクラブも大好きで映画音楽も同じ方がやってたんですね。
    >歌詞の中や、映画の中の何気ない台詞の中に込められている
    本当にそう思います。
    自分もあと何度か観てみようと思います。
    彼の死と何か通じるような映画でした。
    そして自分の人生とも
    すごく美しい映画です。

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